大学経営者にも尋ねてみた。学校法人梅光学院の本間政雄理事長は、文部省大臣官房総務審議官、京都大学理事・副学長、学校法人立命館副総長など、長年、行政と大学の双方で高等教育に関わってきた。

「大学理事長としては判断に迷う問題ですが、オンライン学習では、教育の質が担保されない、と一概に決めつけることはできないように思います。もっとも、対面授業・対面指導という双方の了解のもとに入学し、授業料を払ったはずです。また、図書館や運動施設などが利用できず、授業料は施設利用料も含みますから、学生側の言い分にも根拠はあります。コロナ禍が長く続き、1年間、または年内いっぱい長期のオンライン学習になれば十分な補講はできないので、何らかの措置は検討しないといけないかなと思います。仮に大学が授業料の一部返還を行った場合、人件費・光熱水費など授業をしてもしなくても一定部分固定費として出ていく分について、国から何らかの補填、あるいは感染拡大防止協力金を検討してほしいと思います」

 人文社会系研究者の見方はこうだ。専修大法学部の岡田憲治教授は、政治学が専門で近著に『なぜリベラルは敗け続けるのか』がある。

「たとえば、ガラケーしか持たない学生もいます。大学はこのような学生に対して、ネット環境を整備し、パソコンを支給し、授業を受けられるように配慮してしかるべきです。そのため学費返還、奨学金給付などさまざまな形はあるでしょうが、大学が学生に対する教育活動を進める上で必要な援助といえます。また、20歳前後の学生の1年間はたいへん貴重な時間です。大学は金銭面だけでなく、学生が有意義な大学生活を送ることができるように、さまざまな工夫を考えるべきです」

 大阪市立大文学部の増田聡教授は、美学が専門でポピュラー音楽に造詣が深い。

「教育は学生個々の自己利益のためのサービスではなく、社会全体における知の維持と再生産のために行われる、という原則を社会が再確認し、それをこの状況下でいかに維持するか、の一環として学費減免についても考えるべきと思います。それゆえ、学生の自己利益減少を埋め合わせるための学費減免、というロジックには私は反対です。一方で、大学人のなかには、学生からの学費減免要求に『オンラインでも同じ知識が提供できる』と反論される方もいますが、単に『知識』を提供することが大学の役割ではない、ということは何度でも確認されるべきです」

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