家電量販店で勤務する神奈川県の男性は、勤務を続けることに疑問を抱くようになったという。必要に迫られているお客さんのために店舗の閉鎖はできないと考えているが、実際に店舗に来るのは転売屋ばかり。

「購入する商品や買い方に特徴があるので転売目的はすぐにわかります。PC周辺機器や体温計の電池、ありとあらゆるものが転売屋に買い占められつつある。ひどい日は売り上げの7割が転売屋の仕入れ買い。転売屋の利益のために感染リスクを負って現場に立つのかと、疑問を感じています」

 非常事態だからこそ、会社の本当の体質も露呈する。アンケートでの声は、そんな会社の対応に失望し、見切りをつける人も並んだ。

「今の会社には愛想を尽かしたので近い将来離職することを決めた」(30代男性)
「従業員の健康なんてどうでもいいと思っているのだなと感じた。次はそういった設備が整っているかもちゃんと調べて転職しようと思った」(20代女性)
「緊急事態宣言を出されて尚、東京から福岡へ出張を命じられ、この会社で働くことに失望しています」(30代女性)

 いまだリスクを負って出勤を続けなければならない人たちが闘っているのは、感染リスクだけではない。“自分の命が軽んじられている”という絶望がそこにあることを、はたしてどれだけの経営者がわかっているだろうか。(編集部・高橋有紀)

■アンケートでの主な“声”(編集部でネットアンケートを実施。回答者は453人)

・テレワークもできるのに、上司である役員が毎日出勤する。マイカー通勤の役員は、自分たちにリスクがないと言っているが、電車通勤の一般社員はリスクしかない。(製造業/千葉/50代/女性)

・妊娠8カ月。産休を前倒しにしても良いと言われたが、休めば無給。せめて何割かは補償する、などがあれば仕事を休みたい。出産手当金も産後3カ月後の振り込み。4.5カ月の無給はしんどい。(アパレル製造/千葉/30代/女性)

・毎日出勤しているが、心配をかけるので離れて暮らす家族には内密にしている。(航空会社事務/東京/30代/女性)

・週3で出勤。なぜ営業していない店舗へわざわざ行き、掃除など、今やらなくて良いことをするのか。(アパレル/千葉/30代/女性)

・会社からは「自分の命を最優先に考えて在宅勤務可能な者は在宅へ切り替えろ。ただし業務には支障を来すな」の指示。だが、実際には在宅を可能にする設備整備は何もしてないし、する様子もない。(出版社営業/千葉/50代/男性)

・押印→回覧→承認という文化のため、紙が回らないと現場が進まない。また、電話対応や宅配物の対応ができないという理由で在宅不可。(建設関係事務/東京/20代/女性)

・家で仕事されると邪魔なのでテレワークしないで毎日出勤してほしいと夫に言った。(自営業・フリーランス<夫が化学系メーカーの研究員>/神奈川/40代/女性)

・押印・捺印があるため出社の場合あり。また、出社しなくてはならないと勘違いな使命感を持った人も中にはいる。(営業事務/東京/50代/女性)

・取引先に常駐しているため、取引先の許可がないと難しい。常駐先社員は早くから在宅勤務が推奨され、在宅勤務ができない派遣社員などの協力社員だけが取り残され、対応も忘れ去られている。(UIUXデザイナー/東京/50代/女性)

AERA 2020年4月27日号より抜粋

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