「オリンピックの延期によって正直、急に人生プランが変わりました。自分の年齢を考えるとオリンピックを区切りに……とカウントダウンに入っていましたから。決まった当初はどこに気持ちを持っていったらいいか、揺れまくりでしたね。それでも今は生活環境が変わって空いている時間を、自分と向き合う時間に充てています」
個人競技でも団体競技でもない、極めて最小限のチームスポーツであるビーチバレーボール。そんな特性がある中で、「オリンピックまで1年」という時間を選手たちはどうとらえているのか。
ビーチバレーボールのトップ選手の現役平均年齢は男子34歳、女子32.5歳(2020年強化指定選手男女8名の平均より)。他の競技に比べれば、現役は息の長いほうだろう。さらにオリンピック出場を果たしたペアの結成年数も平均4年5カ月(2000年以降の出場4チーム平均)とあって、ペア競技としてその「時間」はメリットとしてとらえられるかもしれない。現に石井美樹(荒井商事/湘南ベルマーレ)とのペアで6シーズン組んで、世界で戦ってきた村上は力を込めて言う。
「2020シーズンに向けて集大成として取り組んできた海外合宿を通して、自分の思考や発想によい変化が起きました。そのよくなったところをこの1年で自分のものにできると思うし、チーム力に反映することができると思っています。ただ身体に関しては、20代と比べて変わってきているので未知。そこは年齢を感じる部分ですね(笑)」
一方、経験値がモノをいう競技だからこそ、デメリットも拭えない。ビーチバレーボール歴3年の越川はその理由をこう分析する。
「1年延びたことでプラスだね、とよく言われるんですけど、もちろん通常の1年延期であれば有利ですね。でも今回は試合のない時間が半年あってどのくらい練習期間を設けられるかわからない。つまり通常のオフシーズンより長いわけです。自分は今年36歳、身体に気を配らなければいけない。試合経験がない中でどこまで落とさずにどうやってレベルアップしていくか。当然ベテラン選手も同じように年を重ねますが、落ちても経験値がある分、修正できる幅が広い。経験値で劣る自分は、まず身体をベストな状態に戻しベテランを上回るもので勝負していくことが、ポイントになってくると思います」