第二の判断基準は「顔」です。私たちは目鼻口が相応の位置にあるパターンを「“生き物”の顔」ととらえやすい傾向があります。壁のシミが「ぶきみな幽霊」に見えるのも、この手の現象です。たまたま目鼻口のように見える位置にシミがあったのですね。それなのに私たちは、「幽霊の思いは何か」「何をうらんでいるのか」などと、思いをめぐらせてしまいます。
ウイルスは、顔も動きも見えませんが、私たちに危険を及ぼす存在です。その危険を回避するためには、受動的なものと考えるよりも、能動的なものと考えるほうがいいのです。「やつらはどんな人に感染するのが好きなのか」「どんな環境を嫌うのか」などと、“生き物”のように考えると、ウイルスの性質理解や感染防止対策を考えやすくなるのです。だから私たちは、ウイルスを“生き物”と見なしがちなのです。
【今回の結論】ウイルスは生物学的には単なる物体に過ぎないが、“生き物”と見なすことで人間が生命の危機を回避するための対策を取ろうという気持ちが高まり、方法も考えやすくなる。