目指すスケート、披露したい演技、そして、強いアスリート像。羽生に「らしさ」が戻った。そんな上昇気流に乗っていただけに、チェンへのリベンジの舞台だった世界選手権の中止は、人一倍悔しかっただろう。
ただ、飽くなき挑戦は終わらない。世界選手権の中止決定直後に来季について言及。
「今の限界の先へ行けるように練習していく」
夢のクワッドアクセル(4回転半)に向け、道なき道をひた走る。GPファイナルの公式練習では、果敢にクワッドアクセルに挑戦し、転倒しても跳び続けた。「今、自分の目の前に壁がある」と語る羽生。きっと、その壁を越えた景色を見せてくれるはずだ。そして、誰よりも羽生がそれを待ち望んでいる。(朝日新聞スポーツ部・大西史恭)
※AERA 2020年5月4日-11日号