熟成赤身肉を用いる椿5900円(写真は2人前) (撮影/写真部・加藤夏子)
熟成赤身肉を用いる椿5900円(写真は2人前) (撮影/写真部・加藤夏子)
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個室の他に大広間もある。リーマンショック以前は、大手法人がしばしば宴会を開いた (撮影/写真部・加藤夏子)
個室の他に大広間もある。リーマンショック以前は、大手法人がしばしば宴会を開いた (撮影/写真部・加藤夏子)

 外出自粛を受けて東京都心が閑散とする中、昭和の時代から愛されてきた名店も窮地に立たされている。本誌はコロナ禍に耐え忍ぶ名店を応援したい。東京を代表するすき焼き専門店「ちんや」をを紹介する。

【「ちんや」の店内写真はこちら】

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1880年創業。その23年後にすき焼き専門店となった。

 店内には、開化絵と呼ばれる文明開化の文物を描いた浮世絵版画がいくつも飾られている。その激動の時代にすき焼きは誕生したのだ。

 東京を代表する老舗は3年前に「適サシ宣言」を掲げ、業界に激震を走らせた。サシとは牛肉の脂肪分。脂がのっているほど高級な肉というイメージがあったが……。

「近年、過度な霜降り肉が増えて味が落ちてきました。サシにも適量というものがあると思うんです。うちの肉は、黒毛和牛の雌。30カ月ほど飼育された“熟女”で、体重が480kgを超えないものです」と、店主の住吉史彦さん。目視で、その牛肉の融点(脂肪が溶け出す温度)がわかる等々、牛肉への愛情あふれる解説が止まらない。

 メニューは部位の違いから3種に分けられ、サシの少ないモモ肉を熟成させた。甘みの強い割り下と合わせて食べると、口中に肉そのもののうまみが広がっていった。

(取材・文/本誌・菊地武顕)

「ちんや」台東区浅草1‐3‐4/営業時間:月木金12:00~15:00、16:30~21:30、水16:30~21:30、土11:30~21:30、日・祝11:30~21:00/定休日:火(祝日、祝前日の場合は営業)

※この時期の営業日・時間については、お店にお問い合わせください

週刊朝日  2020年5月8‐15日合併号