新型コロナウイルスの感染拡大で都市封鎖(ロックダウン)や行動制限、外出自粛を各国が続けるなか、社会活動再開を模索する動きが出ている。判断材料の一つとみられているのが抗体検査だ。感染後に形成される抗体を測定する検査法で、日本も本格的に着手し始めた。集団免疫がどれくらい広がっているかという考え方だが、信頼できる指標なのだろうか。
国内に出回る抗体検査キットは海外製で、その性能評価の調査を日本も開始。加藤勝信厚生労働相は4月24日、日本赤十字社の献血者を対象にしていると話した。
「出口戦略をどうつくっていくか大きな課題。どういう指標を使うかを含め、これからの議論だが、抗体保有率という考え方があり、それも当然、一つになると思う」
抗体検査の普及を政府に求めていた日本医師会は、利点として、免疫獲得の確認や集団免疫の把握などに適しているとしている。厚労省の担当者はこう話す。
「(症状がなくても時間が経てば検出の割合が高まることから)データを取ることができ、感染の広がりを推測できます。今後の予測の指標にはなります」
政府から依頼を受けた日本赤十字社は、多くの抗体検査キットがあるが性能を十分に評価されたものはないとし、献血者の血液を用いて信頼性を評価する研究を実施する。日本感染症学会は4月23日、政府からの協力依頼で4社の抗体検査キットの性能を10人の患者の血液を用いて予備的検討を実施したが、
「現時点で抗体検査キットを当該ウイルス感染症の診断に活用することは推奨できず、今後さらに詳細な検討が必要」
と公表した。
各国が抗体検査を実施しており、ロシア政府の抗体検査プロジェクトでは、4月24日時点でモスクワ住民の最大で10人に1人が感染している可能性があることがわかったという。公式の感染者数は人口の0.2%とされており、その50倍になる。
各国の抗体検査を進める動きに対し、世界保健機関(WHO)は4月25日、免疫パスポートや安全証明書などを出さないよう警鐘を鳴らした。
新型コロナウイルスについてはわからないことも多く、感染症から回復して血液内に抗体を獲得しても、2度と感染しないという証拠はない。集団免疫ができたと判断して行動制限を緩和すると、感染拡大を助長する危険があるという。
さらに検査キットの精度の問題もあり、従来の6種類のコロナウイルスとの違いを正確に識別しているかも確認する必要があるとしている。
新型コロナウイルスの抗体は一定の防御につながっても、2度目の感染の可能性もある。防御の程度や、いつまで続くのか、わかっていない。
英国でワクチン開発を進めるオックスフォード大学のサラ・ギルバート教授は、新型ウイルスに繰り返し感染する可能性があるとみているという。厚労省の担当者も、
「一般的に免疫力は落ちていくことがあり、予防効果があるのかはわからない」
と話している。(本誌・浅井秀樹)
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