最初は、「高機能マスク(N95)以外は予防にならない」などと言われていたのが、「全くしないよりした方がいいかもしれない」という考えが広がり、4月初めにアメリカ疾病対策予防センターがマスク着用を勧めた翌日には、マスクをする人たちが一気に増えた。
■売れ出した「バカティー」
イリノイ州では5月1日、2歳以上の人が6フィートの間隔を開けられない場合はマスクを着用なければならないルールが導入された。しかしそういう決まりがなくとも、マスクをしていないと周囲から厳しく注意される恐れがある。フェイスブック上では、「バカティー」という名のTシャツが売れ出した。2匹のウサギのうち、マスクをしている1匹が、着けていないもう1匹を引っぱたいている絵柄とともに、すぐ下には日本語の「バカ」をもじって「Baka!」と書いてある。マスク文化だけでなく、日本語まで同時に「輸入」し始めたようだ。
シカゴ市内の静かな住宅街でも、ジョギングしている人や子どもと散歩している親、買い物に行くカップルなど、行き交う人はみんな、何らかの形で口のあたりをカバーしている。青い使い捨てマスクだったり、バンダナをマスク代わりにしていたり、スキー用のフェイスマスクだったり、さまざまだ。近所の女性が一人で運転しながらマスクをしている様子を見た時は、「アメリカ人もここまで」とうなってしまった。何でも、一度こうと決めたら徹底して貫き通すのは、アメリカらしい。
マスクをつい最近まで否定していたアメリカ人の義母も早速、アマゾンを通じてマスクを注文した。そのうえ、今では「周りの人への気遣いとして、マスク着用は当たり前」とまで話している。最初は億劫だったけれども、今では着けてないと何かが足りない気にもなるらしい。「生死が関わってくると、人の態度はすぐ変わるものよ」と主張する。
■手作りマスクを店員に寄付
マスク文化はアメリカではまだ広がり始めたばかりで、市場規模を予測するのは難しい。だが、このコロナ禍で下着メーカー「ヘインズ」はマスクや医療用ガウンのビジネスに乗り出し、あわせて3億ドルの売り上げを今年見込んでいる。マスクを作り始めた洋服ブランドも出てきたが、全般的に生産はまだまだ需要に追いついていないので、多くの人たちは日本同様に、自分で手作りしたり、手作りで作られたものを買ったり、譲ってもらったりしている。