友人からジャノメのミシンを借りて手作りマスクに挑戦するアンダキーノさん。マスクが支給されていない店員らに配っている(撮影/アナベル・メンドーザさん)
友人からジャノメのミシンを借りて手作りマスクに挑戦するアンダキーノさん。マスクが支給されていない店員らに配っている(撮影/アナベル・メンドーザさん)
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アンダキーノさんがつくった、かわいらしいマスク。誰かのためになりたいという気持ちがこめられている(撮影/アナベル・メンドーザさん)
アンダキーノさんがつくった、かわいらしいマスク。誰かのためになりたいという気持ちがこめられている(撮影/アナベル・メンドーザさん)

「マスクがどこも品切れ。しょうがないから手作りで縫っている」

【アンダキーノさんが1つ1時間近くかけて手作りした、かわいらしいマスクはこちら】

 東京に住む母の話を電話越しで、ただ「へぇー」と聞くだけだったのは、ほんの数カ月前。「あなたたちのところにも送ってあげようか」と、シカゴに住む私と夫を気にかけてくれたものの、「そんなのアメリカではしないよ」と笑いながらあっさり断ったのを覚えている。

 しかし、アメリカで外出禁止令が出て約2カ月、犬の散歩で外へ出たりするたび、見かける人たちの8割近くがマスクを着けていることに気づくようになり、慌ててマスクを探す羽目になっている。

■マスク姿を見下していた米国文化

 私は3歳からアメリカで育ち、大学時代に出会ったアメリカ人と結婚し、人生の半分以上をアメリカで過ごしているのだが、外でマスクをするなんてこれまで考えられなかった。新型コロナウイルスの感染が恐れられるようになった今に至るまで、アジア系を中心に浸透していたマスクの習慣を、多くのアメリカ人は怪訝(けげん)に思っていたと思う。

 日本を訪ねたことのあるアメリカの友人が必ずと言っていいほど聞いてきたのが、マスクのことだった。

「アレルギー対策のために着用していることもあるけれど、風邪をひいている時などは、周囲に移さないようにする一種のエチケットだね」と説明すると、その配慮に感心はしてくれるものの、最後はたいてい「日本らしいよね」と他人事のように片付けられてしまった。なかには「本当に効果あるのか」「日本人が神経質すぎるのでは」と聞いてくる友人もいたし、正直、一部のアメリカ人は、はっきり言わずとも「カッコ悪い」習慣として、マスク姿を少し見下しているなと思うこともあった。

 現に、新型コロナが問題になり始めた頃は、そうした偏見がもろに出ていたように思える。

 ニューヨークで、マスクを着けたアジア系の女性が「病気持ち」と罵倒されたうえで、殴られ蹴られた事件が報じられた時には深く同情したが、アメリカでは考えられなくもない、とさえ思った。

 そうしたアメリカの「常識」が、新型コロナウイルスで瞬く間にひっくり返った。

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マスク文化だけでなく日本語も「輸入」