過干渉、身体的・精神的暴力、親の依存症……。複雑な母娘関係を抱えたままようやく自分の人生を踏み出した中高年女性たちが母の介護で再び直面する苦悩、選んだ道は? 親の介護が人生後半の大きな課題になる超高齢社会で、多くの人が問題を抱えがちな母娘の最終章をライターの寺田和代がレポートする。
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当事者たちはどんな選択をするのだろう。拙著『きらいな母を看取れますか? 関係がわるい母娘の最終章』(主婦の友社)から二つの事例を紹介しよう。
両親の離婚を機に家族全員で“家族解散”を決めて以来、母の介護や看取りにかかわるつもりはない、と語ってくれたのは大手企業の研究部門で専門職として働くアユミさん(48)だ。
今は夫と高校生の2人の息子と暮らす彼女が子ども時代から苦しめられたのは、社会的にはエリート会社員だった父の暴力とギャンブル依存症、母のアルコール依存症だった。
「子どもの頃から、父から母への面前DVを日常的に受けただけでなく、父は自分のストレスを私にも暴力や暴言の形でぶつけてきました。食事中に食べ物をこぼした程度のことでいきなり殴られたり、ちょっとした失敗をすごい剣幕で咎められたり。父が家にいるだけでビクビクしていました」
父のもう一つの悪癖は、ギャンブルへの傾倒だ。
「賭け麻雀から、株、債券、ゴルフ会員権、不動産投資などまで。会社員としてはそこそこ高所得だったことから、バブル期に投入して失った分だけで総額1千万になると母から聞きました」
その母に大量飲酒が始まったのは、アユミさんが中学生の頃だ。
「海外出張の多い父が免税店などで買ってきた洋酒を昼から隠れ飲みし、私が学校から帰るとお酒の匂いをプンプンさせていたことも。母のそんな姿にも父は全く無関心でした」
それでも“家族”は続いた。アユミさんが仕事を続けられるよう子育てを手伝う、と母に乞われ、アユミさん夫婦と両親で半々ずつ負担し二世帯住宅を買った。
「家族解散のきっかけは、父の借金でその家まで失いそうになったから。その上、母が飲みすぎて近隣を巻き込む騒ぎまで起こして」