「親との関係や育った環境のせいで生きづらさを感じてきた中高年女性たちが、母(父)を介護する際に直面する思いに社会が耳を傾ける場を設けるべきでしょう。『お母さんを怒鳴りつけたくなるでしょう。でもしなくてよかったねー』と、よそでは言えない本音に共感してくれるような仲間に出会える場(当事者グループなど)を作るのも一つです」
当事者である女性たちにはこんなエールを送る。
「どんな人も人生の優先順位で最初に挙げるべきは、親ではなく自分の人生です。母(父)との関係を時間と労力をかけて整理し、ようやく距離が取れたからこそ自分の人生や暮らしの平穏がある。介護でその距離を縮めてしまって平穏を保てる自信がなければ、やっぱり距離を取り続けることが“正しい”選択だと思います。それともう一つ。子どもたちの母でもある娘は、子にとっても自分がある程度幸せで満足のいく人生を送る義務があります。そこを犠牲にしてまで介護する必要があるでしょうか?」
親との関係には人の数だけ歴史があり、最終章の迎え方も人それぞれだ。当事者の選択を受けとめ、周囲や社会が少しずつ支えていくことが、次の世代を少しでも生きやすくするためにも、求められているのだ。
※週刊朝日 2020年5月22日号より抜粋