TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は、リリー・フランキーさんについて。
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気になるディスクジョッキーが登場した。
ウィットと色気。少し緩(ゆる)く、適度に猥雑。TVよりずっと近い。でも距離感をきちんと保つリリー・フランキーさんである。
放送作家、俳優、イラストレーター、絵本作家、エッセイスト(『日本のみなさんさようなら』を僕は今も愛読している)、作詞家、小説家と肩書を幾つも持つ彼だが、この度週末のFM、初レギュラーである。
土曜の午後4時、昼とも夜ともつかない曖昧な時間に開店する架空のスナック「スナック ラジオ(JFN系フルネット)」。店主のリリーさんは客や店の女の子とお好みの音楽に耳を傾け、街の噂や粋な蘊蓄(うんちく)を披露してほくそ笑んだりする。電波の薄皮一枚を隔て、軽妙で含みあるトークで空想の世界に連れて行ってくれる。夕方のひとときに何ともクセになりそうだ。
伝説的旅番組「ジェットストリーム」6代目機長に福山雅治さんが就任したことを受け、「ジェットストリーム」でのご自身の思い出にリリーさんが触れた回があった。伊武雅刀さんが機長の頃、洋楽一辺倒の番組で邦楽を特集する企画を立ち上げた時の話だ。
ただ音楽を流すだけではつまらない。ココリコ田中直樹さんと井川遥さん出演のラブコメディドラマをはさみつつ矢沢永吉さんの特集になった。ドラマには矢沢さんご本人にも出て頂くことに。脚本はリリーさん。打ち合わせで事務所に伺うと、当時シアトル・マリナーズに在籍していたイチロー選手サイン入りのユニフォームが額に入れて飾られ、「おお、これは!」と僕らが歓声をあげると、「いやいや」とリリーさんはにやにや。「このサイン、俺が書いたの」
この一発にずっこけながらリリーさんにお願いして良かったと確信した。でも一つだけ気がかりが。それはリリーさんが限りなく遅筆だということだった。