3月に華々しくデビューした携帯電話の新規格「5G」の使い道が見えてこない。各社が巨額の投資を打ち出すが、用途の大半は光回線で代替可能だ。AERA 2020年5月25日号掲載の記事で、活用が低調している5Gの現状を明らかにする。
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日本では3月25日に鳴り物入りでスタートした携帯電話の通信規格「5G(第5世代移動通信方式)」。だが、早くも「無用の長物」と言われ始めている。2012年にスタートした前世代のLTE(4G)が、iPhone人気に乗じて爆発的に普及したのとは対照的だ。
NTTドコモなど携帯大手4社は、5Gに5年間で約3兆円を投資する計画とされ、その大半は我々が支払う携帯電話料金が原資だ。今のLTEも場所によってはつながりにくいというのに、5Gには巨額投資に見合う効果があるのだろうか。
結論からあえて言うと、5Gは一般の人には現時点ではほぼ不要と言っていい。
LTEが普及した当時は、前世代通信規格の「3G」を利用するiPhoneが急速に普及し始めていた。そこにLTEが登場。iPhoneやアンドロイドスマホとともに、爆発的に利用が拡大した。つまり、新しい通信規格は、それによって便利になるサービスや技術があってこそ普及すると言える。
ところが、5Gの開始に向けて携帯電話事業者は「特長は高速大容量で低遅延です」と回線の性質をアピールするばかり。携帯電話事業者やIT企業は、5Gならではの目立ったサービスや技術を打ち出せていない。一言で言えば、5Gスマホを買っても目新しいサービスは特に無いということだ。
携帯会社の関係者は「新型コロナウイルスの影響で5Gを使ったサービスのイベントができないのも大きい」と嘆息する。5Gの特長を生かす一般向けサービスとして各社がこれまでアピールしてきたのは、スポーツや音楽ライブをさまざまな角度から撮影して、ライブ中継するというものだった。しかし、ライブやイベントは3密の最たるもので、アピールの場が無いというわけだ。