
開始から25年。作家・林真理子さんの連載「マリコのゲストコレクション」。歴代女性ゲストのお話から、「生き方を考える言葉」をセレクト。今回は、2004年10月29日号から、女優・森光子さんです。
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2012年に92歳で死去した女優の森光子さん。主演舞台「放浪記」は前人未到の上演2017回を達成。女優として初めて国民栄誉賞を受賞しました。対談は、舞台「おもろい女」の公演中。3時間にもおよぶ熱演の後、すっぴんで現れた森さんの美しさに、マリコさんも圧倒され──。
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林:お年のことを言うとおいやでしょうけど……。
森:ここまでくると、もはや平気です(笑)。1920年生まれですから、ばっちり覚えやすいですし。
林:それでいて、この若さと美しさ! もう、信じられない。
森:私は肩幅がないんです。それで得してるかもしれないですね。それと、ちょっと自慢できるのは、声。
林 そう! 少女のようにわざとつくった声じゃなくて、ホントに15歳と思わせる若々しい声なんです。
森:私、おばあさんの役でも、濁らない澄んだ声を出すようにしてるんです。それでたばこもやめました。
林:「放浪記」のときはでんぐり返しが話題になりますけど、「おもろい女」も、歌って踊って漫才して。ハードなお芝居ですよね。しかも、2カ月のロングラン。そのために、森さんは毎日、とんでもないことをご自分に課してらっしゃって。ヤワラちゃん(柔道の谷亮子選手)もかくやと思うような(笑)。エアロバイクにヒンズースクワット……。
森:トレーニングしないと不安なんです。1日2回公演のときはもうグッタリ。帰ると早く寝なきゃと思うんですけど、それでもやります。あれと歯間ブラシは(笑)。
林:ご自分が特別な肉体を持ってると思ったのは、いつからですか。
森:そんなこと、けっして思ってませんよ。いっぱい大病しましたし、乳がんのようなものもありましたから。
林:でもあるときから突然、年をとらなくなっちゃいましたでしょう。