イラスト/小田原ドラゴン
イラスト/小田原ドラゴン

 そんな中、心だけはどこまでも自由である。ここが侵されることがあれば、人である意味もなくなる。

 渡辺県議がいった、「同性婚は気持ち悪い」という言葉。もちろん、彼がどう思おうがそれさえも自由だ。が、それは外に放つ言葉ではない。他者の心の自由の領域に土足で踏み込む暴力だ。そしてまた、誰かが暴力を受けているのを、ただ眺めていてはいけない。いつかその暴力は、自分に向かうかもしれない。

 誰がどんな人を愛そうが、自由。心の自由は、奪われてはいけない。愛欲についても、誰かに干渉されるようなものではない。

 だいたいね、誰かの愛欲なんて、他所(よそ)からしたらみんな気持ちの良いものではない。そこはほっとけよ、って話だ。

 渡辺県議のような日本会議的な考えの人、合同結婚式で強制結婚させる旧統一教会、お気持ちで性搾取を判断するラディフェミたち、みんな他人の愛欲に興味を持ちすぎ。そして自分の絶対を他者に強要しすぎ。

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

週刊朝日  2023年2月17日号

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