室井佑月
室井佑月

 作家の室井佑月さんは、差別発言に対して、「怒りを覚えたほうがいい」と警告する。

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 また歪んだ正義の棍棒を振りかざす愚かな人が現れた。

 1月26日付の「47NEWS」の「再び『同性婚気持ち悪い』と投稿 愛知・渡辺昇県議」という記事によれば、愛知県の渡辺県議がSNSで、「同性婚が気持ち悪いと言って何がいけないんですか」などと投稿したらしい。

 この人は昨年にも、「同性結婚なんて気持ち悪い事は大反対!」と投稿していた。もちろん、こういった差別発言は抗議される。その抗議にも「まともな人が思う事をありのままにSNSに投稿しただけ」などと言い返したというから、絶句する。

 私は渡辺県議のような人がいるからこそ、同性婚は認められなくてはいけないと改めて思う。

 憲法に人はみな平等と定められている。既存のルールを無視し、どれほど他者を傷つけ、どれほど差別的であっても、自分の『まとも』が絶対であると、いい歳した大人がいい張る。イカれているとしかいいようがない。

 現実として、そういうイカれた人がなかなか社会からいなくならないのであれば、早速、法整備をし、不当な扱いを受ける人たちを法で守らなければいけないと感じる。

 同性愛者じゃなくても、このような発言には怒りを覚えたほうがいい。なぜならば、渡辺県議は、他者の内心の自由の領域を侵そうとしているからだ。

 今の時代に、この国の、今の親の元に生まれ、仕事につき、今の暮らしをし……。変えようと思っても、自分だけではすぐに変えられないことばかりだ。人は一人では生きていけないから、社会という一定の囲いの中から逃れられない。

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室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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