僕が知る限り、今回のマージャンに参加していた記者がそうした記事を書いた気配はありません。政権の問題点などを浮き彫りにするスクープを『週刊文春』が連発するなか、結局のところ新聞記者は権力者と懇ろになるだけで、市民が知りたいことは報じないんだという強烈なメディア不信を持たれても当然でしょう。
――酒席やゴルフよりもマージャンの方が密接な時間が長く、記者にとっては情報が取りやすいという側面はあるのでしょうか。
青木氏 ゴルフはやらないのでわかりませんが、マージャンは酒を飲みながら打つこともできるし、時間が長いということはあるかもしれません。ただ、いわゆる接待マージャンですから、コテンパンにやっつけるわけにもいかないし、本気でやってるふりもしなくてはいけないし、相手が「勝つまでやめない」なんていうタイプだったりすることもあって、結構面倒くさいですよ(笑)。
僕は直接の面識がありませんが、黒川氏はかなりマージャンが好きなようで、つい最近も別の大手紙記者に「マージャンをやりたい」と声をかけていました。検察官僚としてはとても社交的で人づきあいが良く、人たらしのような側面もあると聞いています。政官界への人脈も広く、根回しや調整能力も非常に高いそうです。
そういう意味では能吏で、黒川氏を直接知る検察OBや関係者で彼を悪く言う人はほとんどいません。記者の評判もいい。それなりに情報もくれるんでしょう。要するに、話していいこととダメなことの腑分けがきっちりとできて、話せることはきちんと話す柔軟性と頭の良さも持っている。
その社交的で人づきあいが良いと言われる部分などが、今回は最悪のスキャンダルとして噴き出してしまったわけです。推測ですが、政権から抜擢される形で次期検事総長と目され、自分がよもや「刺される」ことはないだろうというおごりがあったのかもしれません。当たり前の常識と自制心がある人間であれば、こんな状況下で記者たちとマージャンをやろうなどという発想にはならないでしょうから。