「21歳……ってことは、黄色い日記に書いてあったあのアパートですか?」
「そうそう。でもあの魔法のiらんどの黄色い日記、今度サービスが終了して消えるらしいよ」
「ええっ!? そんな……僕あれ大好きで、バイトの休憩中によく読んでいたんですけど……」
「黄色い日記」とは、尾崎がインディーズ時代に書いていたブログのことである。歴の長いファンから人気が高く、今でもスクリーンショットで保存して大切に読み返している人も多い。尾崎にとってのものを書くことの原点はそのブログにあるのかもしれない。椎木は、尾崎のブログに影響され、自分でもブログを書くようになった。
「こんなに赤裸々に物事を書くということ、『◯◯があって嬉しかった』という内容がこんな表現になるんだということが衝撃的でした」
世間的にはいわゆる「邦ロック」として分類されがちなクリープハイプとMy Hair is Badだが、実は、音楽的には両バンドの共通点はあまりない。クリープハイプがフォークなどJ-POP以前の音楽を下敷きに発展したロックであるのに対し、My Hair is Badはハードコア・パンクやメロディック・ハードコアを原点としている。
ではどこで共鳴し合っているかといえば、言葉だ。
「俺と椎木の共通点は」と尾崎は語る。
「言葉を疑いながらも歌詞や日記を書いて、言葉を使って人に訴えかけようとするところだと思う。ただ、言葉を使って人の心をつかむのは、ある意味、詐欺だとも思う。でもその方が、音だけで勝負するよりもお客さんと深い関係を築けるんだと思う。それはわかりやすい数字には現れない部分だけど、でも、聴いた人たちの心には言葉が残って、深く根付いていく。その点において、椎木は自分の流れを汲んでくれているのかもしれないと思う」
一方の椎木は「尾崎さんの曲には10代のいちばん純な頃に出会ったから、自分の身体にすごく染みついています」と語る。
「特に歌詞は、もはや自分のものだと思ってしまっている節さえある。それくらい影響が強いから、どこがどう影響を受けているのか、説明するのは難しいです」
(取材:山田宗太朗)
※「尾崎世界観が椎木知仁との初対談で明かした、これまで対談を断ってきたワケ」へつづく