4月12日から16日の間に、「人工衛星」という名の長距離弾道ミサイルを発射されるといわれる北朝鮮。「コリア・レポート」編集長・辺真一氏は2通りの危険な"弾道シナリオ"を示した。
 一つ目はミサイルを加速させる1段目ブースターの実際の弾道が少しでもずれて韓国の国土に近づいて落ちてくるケースだ。
 この場合、韓国に駐留する米軍から迎撃される可能性が考えられる。2009年のテポドン発射前、米国のゲーツ国防長官(当時)は、「迎撃も辞さない」と北朝鮮を牽制。それに対し、今年1月に「(09年のミサイルが)仮に迎撃された場合、戦争する決意だった」と、金正恩の誕生日に放映された映像で、金正恩自身の言葉が紹介された。
 結局、迎撃されることはなかったが、今回も迎撃すれば北朝鮮はいつでも「反撃」に転じる構えを取っているのだ。
 二つ目のシナリオは国際政治上の駆け引きの"弾道"だ。ミサイルが撃ち落とされることなく、計画通りフィリピンの東海上に着水しても、米国は国連安保理で、北朝鮮の「海上封鎖」を求めてくるとみられている。
「海上封鎖」は"準戦争行為"に近く、さらに1953年に調印された朝鮮戦争休戦協定には、「海上封鎖をしてはならない」という条項が明記されており、実行されれば「休戦協定違反だ」と主張して反撃に転じることができる。
 どちらにしろ北朝鮮のミサイル発射で、戦争へ向けて危機的状況が加速している。

※週刊朝日 2012年4月20日号