「新型コロナウイルスで“とどめ”を刺されたようなものです」
【グラフ】驚きの結果!コロナ関連の経営破たんはここまで増えた
千葉県船橋市の老舗旅館「割烹旅館玉川」の小川了支配人は、ため息を漏らす。5月19日、4月末で営業をとりやめたことを明らかにした。
創業は1921(大正10)年。まもなく100年の歴史を重ねようとしていた矢先だった。76(昭和51)年の火災で建物の一部は焼けてしまったものの、昭和初期に建てられた木造の建物も残っており、国の有形文化財に登録されている。作家の太宰治が35年に20日余り滞在した部屋もあり、それを目当てに訪れる宿泊客や外国人も少なくなかった。
「昨年秋に台風が2度直撃し、もともと古かった建物の傷みは余計にひどくなり、修繕や管理にかかる費用が膨らみました。東京五輪の延期を受けて予約客のキャンセルが集中し、もう全面的に補修するのは難しいと判断し、旅館をたたむことにしました」(小川さん)
コロナの感染拡大は経済や産業に大きな打撃を与えている。営業休止や時短営業の要請で、事業活動が制限されるとともに、外出の自粛で消費者が街に出なくなった。訪日外国人客(インバウンド)も激減。企業や店の売り上げは減少し、経営に行き詰まるところが増えている。
東京商工リサーチによると、新型コロナ関連で倒産を含めて経営破たんに追い込まれた企業は5月22日時点で172件に達した(うち倒産は113件)。宿泊・ホテル関連のほか、飲食業やアパレル関連など、インバウンド需要や個人消費に支えられていた業種が目立つ。音楽教室の運営会社や配食サービス、学校給食向けの食材販売会社などもある。1860年創業の醤油メーカー「とら醤油」(岡山県)など、古くから地域経済を支えてきた企業も少なくない。
東京・上野にある森鴎外ゆかりの旅館「水月ホテル鴎外荘」も、5月末に約80年の歴史に幕を閉じる。女将の中村みさ子さんは「コロナをきっかけに、あくまで自主的に閉館の道を選んだ」と明かす。