コロナ禍で世界の人の交流が途絶え、芸術やスポーツのイベント自粛が相次ぐ中、ドイツのグリュッタース文化相は「芸術家は我々の生命維持に不可欠」として、アーティストへの支援策を実行していきました。メルケル首相も最近、パンデミックを克服した後の課題として、多彩な文化的環境を存続させることを「優先順位の一番上に置いている」と語ったそうです。
リーダーのこうした発言は、スポーツ文化の担い手である選手、コーチへのエールになります。「スポーツは、世界共通の人類の文化である」とうたうスポーツ基本法に基づいて選手強化を進める日本のスポーツ行政のトップは、競泳出身の鈴木大地・スポーツ庁長官。ぜひ積極的に発言してほしいと願っています。
国内の選手強化拠点の味の素ナショナルトレーニングセンターは5月末までの閉鎖が決まっています。休業要請を受けているスイミングクラブも苦境が続きますが、地域によって営業再開の動きが出ています。日本スイミングクラブ協会は「感染拡大予防のためのガイドライン」を5月18日付で発表しました。換気の徹底、更衣室面積に応じた入室者数制限など安全に配慮しながらクラブを運営する指針を示しています。
日本のスイミングファミリーの行動力に頼もしさを感じます。感染拡大防止を最優先にどのように水泳に取り組むか。新しいスポーツ文化を育んでいく気概と発想力が試されています。
(構成/本誌・堀井正明)
※週刊朝日 2020年6月5日号