指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第21回は「世界のスイミングファミリーの絆」について。
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世界で新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組みが続く中、海外の友人から練習を再開したという知らせが届き始めています。
ドイツの競泳ヘッドコーチ、ベルンド・ベルクハン氏は5月中旬のメールで「トップチームは練習を継続できています」と近況を知らせてくれました。10月にベルリンで開催予定のワールドカップ(W杯)が自粛解除後初の大会になりそうで、12月には全国大会を計画しているそうです。
ベルクハンコーチとはスペインの高地合宿で同じ施設を利用することもあって、練習のやり方など積極的に情報交換しています。元気でやっているようなので、ホッとしました。スペインの選手からも「練習が再開できた」と連絡がありました。海外の選手やコーチはライバルであるとともに、国や人種を超えたスイミングファミリーの一員という思いがあります。無事を確認できると、自分も力がわいてくる気がします。
私のチームが高地合宿を行ったスペイン・シエラネバダの国立スポーツ施設は感染拡大防止のために3月から一時閉鎖されていましたが、ソーシャルディスタンスの確保など安全対策を徹底することで5月18日に再開しました。米国、オーストラリア、イタリア、韓国、中国、タイなど競泳トップ選手の練習を再開させている各国の動きは、大きな励みになります。
世界のトップスイマーに成長した北島康介は海外に多くの友人ができました。日々の練習を通して力をつけ、記録の限界に挑む。勝敗を競い合う仲間として、言葉の壁を越えて理解し合える。4年に一度の五輪を最大の目標に努力する世界の仲間との交流を通して、私自身も成長できています。スポーツは音楽や芸術と同じ文化だという思いで指導してきました。