娘に性的暴行を行ったとして準強制性交等罪に問われた父親の裁判。控訴審判決が出された日、名古屋高裁には支援者たちが集まった/3月12日 (c)朝日新聞社
娘に性的暴行を行ったとして準強制性交等罪に問われた父親の裁判。控訴審判決が出された日、名古屋高裁には支援者たちが集まった/3月12日 (c)朝日新聞社
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AERA 2020年6月1日号より
AERA 2020年6月1日号より

「魂の殺人」と言われる性暴力。だが現行刑法では、罪の成立には「暴行・脅迫」や「抗拒不能」が要件となる。3月、刑法を見直す議論をするための検討会が立ち上がった。性被害者の視点に立った法整備は進むのか。AERA 2020年6月1日号では、日本の性犯罪をめぐる刑法の現状を取材した。

【主な国・地域の性犯罪に対する処罰はこちら】

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 同意のない性交はすべて犯罪だと法で定めることができるか──。性犯罪を巡る刑法改正は「今年」が焦点になる。2017年に刑法改正が行われたが、課題が残されているとして、「3年後」に見直しされることになった。今年がその年に当たる。

 3月には、性犯罪に関して理不尽極まりない判決が覆った。

 当時19歳だった実の娘に性的暴行をしたとして、準強制性交等罪に問われた父親(50)の控訴審判決。3月12日、名古屋高裁は1審の無罪判決を破棄し、懲役10年を言い渡したのだ。

 判決の後、被害者女性は弁護士を通じてコメントを出した。

「やっと少しホッとできるような気持ちです」

 父親はその後、判決を不服として最高裁に上告したが、1審・2審で争点となったのが「抗拒不能」。抵抗が著しく困難な状態を指す法律用語だ。

 日本の現行刑法では、意に反する、もしくは同意のない性行為だけでは罰せられない。「暴行・脅迫」を用いたら強制性交等罪、そして「抗拒不能」の状態であった場合に準強制性交等罪が成立する。

 1審では、娘の同意がなかったことは認められたが、抗拒不能の状態だったと認定するには合理的な疑いが残るとして、父親は無罪となった。衝撃を受けた人々によって、性暴力の根絶を目指す「フラワーデモ」のうねりが起きた。一方で2審は、「抵抗する意思を奪われ、抗拒不能状態であったことは優に推認される」と逆の結論を導いた。

「魂の殺人」と言われる性暴力で、被害者が感じた恐怖、衝撃は言葉では尽くせない。

 先の女性は被害に遭っていた時のことを、

「とても怖くてじっとたえ続けるしかありませんでした」

 と振り返っている。

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