

これは文化的気づきのある素晴らしい作品だ。世界中の様々なフォークロア・ミュージック(民族音楽)をクロスオーバーさせた作品の中でも、今年屈指の一枚と言ってもいいかもしれない。
日本の端唄(はうた)や民謡の歌い手である柳家小春と、ジャマイカの大衆音楽の一つであるロックステディを聴かせる日本のバンドのattc(エーティーティーシー)とによるコラボ・アルバム「縁かいな~Bring Us Together」のことだ。これが驚くほど相性がいいというか、世界に数多(あまた)ある民族音楽は実は、「底流でつながっているのではないか」と、想像力をかき立てられるアルバムになっている。
柳家小春はもともと音曲師(おんぎょくし)という枠組みに収まらない、三味線の弾き語りというユニークなスタイルで活動する音楽家。国内外で活躍する男女ポップ・ユニットの「テニスコーツ」とコラボ作品を出したこともある。AMEPHONE、山田民族、塚本真一、庄司広光によって2012年に結成されたattcも、メンバーそれぞれが多様な活動やプロデュースで20年以上もの経験を積んできた強者軍団的存在だ。この5人がそろったら、それだけでもはや、音楽性の垣根などなくなってしまう。とはいえ、実際にファースト・アルバム「縁かいな~Bring Us Together」は日本の伝統音楽とロックステディとが単純に合体しただけの作品ではない。音楽をあくまで大衆文化の一つとしてとらえ、もっと広くその歴史を俯瞰(ふかん)してみたくなる作品なのだ。
もっとも、アルバムでとりあげられている楽曲自体は日本の端唄、俗謡、小唄だ。2曲目「梅は咲いたか」は、「~桜はまだかいな」と続くフレーズでおなじみの江戸端唄で、お座敷小唄として有名だ。他にも「さのさ節」「山中節」「淡海節(たんかいぶし)」などの民謡も選ばれている。中でも「五木の子守唄」は、現在NHKの連続テレビ小説「エール」のモチーフになっている古関裕而(こせきゆうじ)が採譜し、広く歌い継がれることにもなった有名な熊本民謡である。「大津絵 両国」は柳家小春の師匠である柳家紫朝の十八番としても知られる粋曲(すいきょく)だ。ある一定の年代の方にはよく知られた曲ばかりと言っていい。