そこには、国民を欺こうという官邸官僚の策略もある。訓告という措置を行ったのは法務・検察であるのは事実だが、それだけ言って黙っていれば、懲戒処分をしないと決めたのも法務・検察であるかのように聞こえるという計算だ。
ちなみに、マスコミの報道でもう一つ注意したいのは、黒川氏の行為が該当すると思われる「常習とばく」の場合の懲戒処分は、「停職」であるという解説だ。これは、人事院の「懲戒処分の指針」の「標準例」によるものだが、実は、その「指針」の中には、標準例より重くする可能性のある例として、「職責が特に高いとき」や「公務内外に及ぼす影響が特に大きい」場合を挙げている。黒川氏は検察ナンバー2で極めて高い地位にあり、また、今回の行為による検察への国民の信頼の失墜という影響は特大級だ。これら2点を勘案すれば、標準例の「停職」よりも一段厳しい処分、すなわち、「免職」にするのが常識的判断だろう。
その場合、退職金はゼロとなる。
つまり、テレビや新聞のまどろっこしい解説などに惑わされず、素直に人事院の指針に従えば、誰もが妥当だと納得する結論になるということだ。
※週刊朝日 2020年6月12日号