3月26日に「房総沖に2活断層判明」「二つが南北に並走」「M(マグニチュード)9級、津波も」などと、複数の全国紙やテレビが、未知の巨大活断層が見つかったと報じた。

 「房総半島、伊豆半島、小笠原諸島、湘南地域を大きな津波が襲うかもしれません」と強い口調で警告するのは、今回、「大活断層」の存在を発表した東洋大社会学部の渡辺満久教授(変動地形学)だ。

 渡辺教授らの研究グループが発表した「大活断層」は二つ。どちらも房総半島南端から南東に百数十キロ以上離れた海底にある。二つの断層はほぼ並行して走り、東側の断層は南北に300キロ以上、西側は少なくとも160キロの長さだという。

 その北側には、延宝房総沖地震(1677年、M8.0)や、房総沖地震(1953年、M7.4)の推定震源域がある。今回見つかったのは、これらの地震を起こした活断層とは異なるとみられ、「これまで活断層があるとは考えられていなかったノーマークの場所」(渡辺教授)だという。

 活断層とは、「最近の時代まで繰り返し活動し、今後も再び活動すると考えられる断層」のことだ。ただし、「最近の時代」がいつを指すかをめぐっては諸説あり、活断層の定義自体にあいまいな部分もある。

 渡辺教授らの研究グループが活用したのは、海上保安庁や海洋研究開発機構のデータだ。渡辺教授によると、最近は既存のデータを使い、リアルな立体の海底図が再現できるようになってきた。これをもとに地震で形成される崖や地形の盛り上がりなどを判読すれば、活断層を特定できるのだという。

 「私たちは4年ほど前から、そうした手法で海底の活断層を詳細に認定しています。今回見つかった断層では、東側の断層の高低差は2千メートルありますが、今までに何百回、何千回と地震を起こさないと、こんな高低差は生まれません。数千年から数万年前に、断層が動いた痕跡もある。よって、ここは活断層だと認識できるのです」(渡辺教授)

※週刊朝日 2012年4月13日号