福島第一原発で事故対応にあたった最高幹部の一人が取材に応じた。最高幹部は地震直後からメモを書き残していた。そのメモをもとに、当時を振り返った。

 電源車の手配はずいぶん前に本店(東京電力本社)に要請していた。しかし、一向に到着の連絡はない。到着見込み時間すらわからない。いくら地震の被害が甚大だとしても、もう到着してもいいはずだが……。

 次のメモにはこうある。

〈電ゲン融通 ×〉

 電源融通とは、隣接する原子炉建屋から電源を供給してもらうことで、外部電源を失ったときに有効な方策だ。

 福島第一原発には、六つの原子炉がある。同じ敷地内に原子炉を複数設置するのにはそんな長所がある。しかし、福島第一原発では、5~6年前にケーブルで六つの原子炉をつなぐ計画があったが、なぜか頓挫してしまった。「なぜ、あのときにつないでおかなかったのか……」。そんな思いがふと頭をよぎった。

*今西憲之+週刊朝日取材班著『最高幹部の独白~福島原発の真実』より抜粋

週刊朝日