福島第一原発で事故対応にあたった最高幹部の一人が取材に応じた。最高幹部は地震直後からメモを書き残していた。そのメモをもとに、当時を振り返った。

 電源は回復しないまま、作業員たちは携帯電話の画面を懐中電灯がわりにしていた。恥ずかしいことに、原発内には、懐中電灯はもちろん、電池すら必要十分な量のストックがなかった。手分けして集められた電池や懐中電灯の数を見て、1・2号機の中央制御室にいた同僚は、「たったこれだけか」と絶句したという。原発で働く者も、原発の「安全神話」を信じ込んでいた。

 手帳のメモにはこうある。

〈電ゲン、確保 ユウセン〉

 頭が混乱していたのか。電源の「源」の字が思い出せなかったのだろう。このあともずっとカタカナだった。

*今西憲之+週刊朝日取材班著『最高幹部の独白~福島原発の真実』より抜粋

週刊朝日