日本各地で地震が相次いでいる。コロナ禍に直面しているいま、大地震の予兆ではないかと不安は募るばかりだ。危険な地域や想定される被害などを専門家に聞いた。
「あの地震のときに新型コロナが起こっていたら、本当に怖いと思う」
こう話すのは熊本市に住んでいた男性(30)だ。2016年4月の熊本地震。全壊8千棟以上、半壊3万4千棟を超える被害をもたらした。熊本県で855カ所の避難所に計18万人が避難した。
男性は住んでいたアパートが大規模半壊し、近くの小学校に避難。体育館で3カ月間、避難生活を送った。他の住民も多数避難してきており、校庭に自動車を乗り入れ、車内で避難生活をしている人もいた。
「余震で家にいることが不安という人も避難所に集まっていた。高齢者も多かった。1カ月くらいは間仕切りもない生活。新型コロナがある状況で、このような場所に避難となると危険だと思う。どう避難したらいいか想像もつかない」
今、各地で地震が活発に起きている。熊本地震や東日本大震災のような大災害がいつ起こってもおかしくない。危険な地域はどこで、どんなリスクがあるのか。改めて注意しておくべきだろう。編集部では気象庁の震度データベースから、今年(1月1日~5月15日)の地震活動の状況を調べた。
最も地震が多かったのは松本市(長野県)で79回、次いで高山市(岐阜県)が75回だった。隣り合う両市には北アルプス(飛騨山脈)がまたがる。震度1の小さな地震が多いが、5月29日には震度4の強い揺れも起きた。松本市では6カ所の山崩れが発生し、高山市のホテルでは30年以上枯れていた温泉が噴出した。
「群発地震が起きている」
名古屋大学地震火山研究センターの山岡耕春教授はそう指摘する。群発地震とは、ある地域で小さな地震が一定期間集中して起こることをいう。北アルプスの地域は東から太平洋プレートが、南からフィリピン海プレートが動いてきて、その力がぶつかる場所だ。ひずみが生じやすく、たびたび地震が起きる。
「北アルプスは今も山が隆起している。今後も小規模な地震が続くが、中にはマグニチュード(M)5.5~5.9程度の中規模な地震が起こる。家の倒壊の心配はないが、落石や土砂崩れに気をつける必要がある」
東日本大震災によってひずみが解消された場所もある。一方で、日本にある4枚のプレート(太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレート、ユーラシアプレート)のバランスが崩れて、新たなひずみがたまってきているという指摘もある。北アルプスの群発地震は、そのサインと見るべきだということだ。