「多くの避難所で必ずしも十分な衛生管理体制を保てるとは言えない。在宅避難も選択肢として検討しておく必要がある」
在宅避難の判断の分かれ目は、自宅が安全かどうかだ。事前に自宅がどういう状況かを確認する必要がある。
住んでいる自治体の津波、洪水、土砂災害のハザードマップを見れば、自宅が警戒区域になっているかどうかわかる。自治体は地域一帯に避難勧告を出すが、マンションの上階など自分の住んでいるところが必ずしも避難する必要がない場所であるケースもある。
また、耐震基準を満たしているか、地盤がどうかも確認しておく必要がある。81年6月より前の建物は旧耐震基準であるため、注意が必要だ。自治体が公表している地震ハザードマップのほか、国土地理院の「治水地形分類図」を活用すれば、住む場所が揺れやすい湿地なのか、旧河川なのかなどを把握できる。
「在宅避難ありきではない。津波、洪水、土砂災害の可能性があったり、耐震性に問題があったりする場合は、直ちに避難することが大切。まずは身の安全を守る行動を優先してほしい」(村上氏)
実家や親類宅などに避難できるかどうか事前に話しておくのもいい。自治会など地域で避難場所を検討し、近くの企業や寺、神社などを避難先として交渉することもあり得る。自宅の庭でテントに避難するのも一つだ。
「避難する際に、これまで想定されていなかったものの準備が必要になってきている」
こう言うのは、災害対策の専門家である浜松医科大学健康社会医学講座の尾島俊之教授だ。避難所で注意するポイントは「飛沫(ひまつ)感染」と「接触感染」の二つだと指摘する。
飛沫感染を防ぐために重要なのはマスクだ。自治体から配布があっても、時間がかかることもある。1週間程度のマスクは自分で確保したほうがいい。
接触感染を防ぐために、消毒液も用意しておきたい。ものを介してウイルスに感染するリスクがあるためだ。除菌できるウェットティッシュも役に立つ。タオルも複数人で使いまわすのではなく、個人用を用意しよう。ペーパータオルがあれば、そのまま捨てられるのでより安全だ。