そして、11年3月6日、東京・新宿で開催された第2回箱根山駅伝大会にゲスト出演した燕太郎は、観客にまったく相手にされず、空気のように扱われてしまう。

 この一件がきっかけで、球団側も「あまりに存在感がなくて、集客に反映されていない。違うマスコットを作ったほうがいいかもしれない」と、戦力外通告を検討しはじめる。

 そんな“マスコット生命”の一大危機に、燕太郎は、ツイッターやフェイスブックなどを利用した認知度アップ作戦を展開。ブログ「燕太郎ひとごと日記」で日々の出来事を投稿したり、燕太郎グッズの在庫100個を手売りしたりと、リストラ回避のため、涙ぐましい努力を重ねる。

 さらに5月25、26日のオリックスとの交流戦では、地面に寝そべりながら、オリックスのマスコット「バファローベル」の短めのスカートの中を覗き込むなどのセクハラ行為で目立とうとした。結果は、バファローベルが「可愛過ぎる!」「萌える!」と野球ファンのみならずフィギュア人形ファンからも注目を集めたのに対し、燕太郎は「こいつ性欲の権化だな」とキモキャラのイメージを強調しただけで終わった。

 7月には全7項目をクリアできなければクビという「ミッション・燕(エン)・ポッシブル」を課せられ、青息吐息でチャレンジ。12年8月には日本の金魚三大産地で知られる江戸川区の金魚まつりに参加。写真撮影にひっぱりだこの地元のマスコット「えど金ちゃん」を見て、「えどきんちゃんのにんきにしっとしました」とボヤいている。

 といった具合に、現役続行目指して必死にアピールを続けたが、そんな努力も空しく、13年12月、「新たな展開で新規のファン獲得を目指す」という球団の方針により、同年限りで「卒業して普通のツバメに戻る」と発表された。年明け後の3月、ファンから「燕太郎はどうしたんですか?」と尋ねられたつば九郎がお墓のイラストを表示したことから、「つば九郎が殺ったんだ」と、一時は“殺害説”も取り沙汰された。

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今では引退を惜しむファンも?