テレワークの移行でそれまでの当たり前が通用しなくなった。多くの会社で直面した問題として、紙文化や印鑑などが挙げられる。アース製薬の場合はどう対処したのか。AERA 2020年6月22日号は、働き方改革が進んだ背景に迫る。
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急激なテレワークの増加による働き方改革を、陰ながら支えた人たちが、システム担当者だ。社内と同じネットワーク環境を社外に構築するVPN(仮想プライベートネットワーク)の同時接続数が増え、ネット上には「VPN渋滞」という言葉も飛び交った。
アース製薬でも、緊急事態宣言後にテレワークをする人が一気に増えた。コロナ前と比較すると、想定をはるかに上回る5倍近くの人数がVPNに同時接続した。
同社では元々、東京オリンピックを見据えて6月にVPNを増強する予定だったが、これを4月に前倒しして実施した。
さらに、社員に「業務上必要がないときは、極力VPNに接続しないで」という注意喚起を、4度にわたって行った。システム担当責任者は当時をこう振り返る。
「中には、気がつかずにVPNをつなぎっぱなしにして作業をしている人もいたので、『他の人のためにも、使い終わったら切断してほしい』とアナウンスしました」
自宅のある地域によってVPNに接続する時間帯を変えてもらうといった工夫も奏功し、接続がダウンするといったトラブルは回避できたという。
同社ではコロナ禍を機に、働き方改革が期せずして進んだ面もある。以前から準備を進めてきたものの、この数カ月で一気にペーパーレス化の取り組みが加速したのだ。
「この機会に、一気に社内システムの電子化を進めてしまいたい、という思いになりました」
と、先のシステム担当責任者は胸の内を明かす。
同社は、どちらかといえば紙文化が根強く、紙を使った社内申請が多く残っていた。しかし、テレワークに移行すると、紙ベースでの手続きはむしろ足かせになる。書類を印刷したり、印鑑を押したりするためだけに出社するのは無駄ではないか。電子化に向けた社内の機運が一気に高まった。