漫画喫茶は飯田さんと恋人が2人になれる貴重な場所だ。写真はイメージ。(C)朝日新聞社
漫画喫茶は飯田さんと恋人が2人になれる貴重な場所だ。写真はイメージ。(C)朝日新聞社
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飯田さんが正社員採用されたときに買ったバッグ。今でも大切に持っている。
飯田さんが正社員採用されたときに買ったバッグ。今でも大切に持っている。

 バブル崩壊後の1993年~2004年ごろに高校や大学を卒業した世代は「就職氷河期」と呼ばれ、約1700万人いるとされる。新卒の就職競争であぶれた氷河期世代の多くは非正規社員となり、ニートになった若者もいる。現在は「結婚適齢期」になった彼らの婚活や恋愛事情を追った。

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「良い大学に進学すれば、有名な企業に勤められる」

 ひと昔前までは誰もがそう信じていたし、親も子どもにそう言い続けてきた。

 都内在住の飯田隆さん(仮名=43)もその1人だったが、いわゆる「就職氷河期」に大学を卒業したことで、新卒時の就職活動では“惨敗”。現実はまったく違ったことを痛感させられた。現在の年収は300万円以下で、生活に余裕はない。

「私は両親の言いつけを守って、好きなこともがまんして、ずっと勉強だけに専念してきたのに……」

 飯田さんは悔しそうに学生時代を振り返る。

 父親は1部上場企業の管理職で、母親は専業主婦。高度経済成長期にはどこにでもあるような中流家庭で育った。過干渉な母親にはうんざりしていた時期もあったそうだが、道をそれることもなく、親の言うことを信じてコツコツと勉強してきた。

 経済的には何ら不自由せず、飯田さんは中学受験で有名私立中学に入学し、エスカレーターで系列の大学まで進んだ。成績は常に上位10%に入るほどの秀才だった。大学もサボることなく真面目に通い、世間の親からみれば「自慢の息子」だったに違いない。それが、就職活動で一変することになった。

「将来はゲームに携わる仕事に就くことが夢でした。レースゲームランキングで全国2位になったり、RPGゲームを題材にした漫画を描いたり、学生時代はゲームに熱中していました。業界の研究もしていたので、どこかには入れるだろうと思っていたのですが……。実際はゲーム業界だけでなく、他の業種も計30社にことごとく落とされて内定はゼロ。結局、就職することすらできませんでした」

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「読書感想文」と「社訓暗記」を2年間やらされた