当日、RADWIMPSは番組で新曲「新世界」を初演奏する。しかし、当初は、「ココロノナカ」という別の曲を披露する予定だった。

野田:実は先に「ココロノナカ」ができていたんですけど、自分で歌ってみてどうもしっくりこなかった。これを歌うことで皆の心が癒やされてくれるのなら、それはもちろんうれしいです。

 でも、ただ“希望”をうたうだけでいいのかな、という違和感が、自分の中でどんどん強くなってしまった。それで急遽作ったのが「新世界」でした。

 ストレートな応援ソングである「ココロノナカ」に対し、「新世界」で描かれているのは“変質してしまった日常”だ。

野田:新型コロナウイルスによって、あぶり出された社会の仕組みや矛盾に対する自分なりの思いを込めました。

 新型コロナによって「大丈夫な人」と「大丈夫ではない人」の差が、より大きな社会になっていると感じます。終息しさえすれば元通りの日常を送ることができる人がいる一方で、仕事や家、大切な人を失ってしまった人もいます。10代や20代の若い人たちも本当に大変で、学校もいつ再開されるかわからなかったし、就職活動にだって大きな支障が出ている。アフターコロナの世界とひと口に言っても、見える景色や歩き方は、人によってまるで違ったものになる気がしています。

 これからはより一層、他人のせいにはできない世の中になっていくと思う。

 新型コロナに端を発する一連の動きの中では、社会のさまざまな分断線が浮き彫りになった。特に休業補償をめぐっては「自粛を要請するなら補償すべきだ」と声が上がる一方で、「特定の業種や職業だけを救済すべきではない」との声もある。

野田:東日本大震災のときも同じでした。必ず対立する意見が生まれる。コロナはずっと黙ってるけど、不思議なことに、人間のドロドロした部分が勝手にあぶり出されている気がします。

 ミュージシャンにとって、ライブができなくなることは、死活問題だ。自身も個人事務所で、バンドをセルフマネジメントしている。

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