TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は、小林麻美さんとユーミンの友情について。
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小林麻美が生まれ育った街と聴いてきた音楽を、その匂いとともに紹介したFM番組(『True Stories』6月7、14日)にリスナーから多くの反響が寄せられた。
「時代のミューズってすごい。ひとりの魅力的な人物がいて、その象徴になるほど熱を帯びた時代だったのですね」「化粧品のCMが流れると前のめりでテレビを見つめていた頃を懐かしく思います」「ウッドストックのライブをワォって思いながら聴いたという話、ワイルドな思春期だったんですね!」「『雨音はショパンの調べ』は大好きで、大人の魅力に魅了され何度も聴きました。ユーミンと仲良しだったことも知りました」
小林麻美とユーミンのデビューは同じ1972年。彼女たちは、濃密な60年代後半から70年代にそれぞれミッションスクールに通い、横浜、横田の米軍キャンプに出入りし、カウンターカルチャーのダイナミズムを知っていた。
『雨音は~』はイタリアの歌手ガゼボの歌う「アイ・ライク・ショパン」が原曲。ロンドンで耳にしたユーミンは、麻美に歌わせたいと直感した。
「麻美ちゃん、ここはウィスパーっぽく、ブレスを音の中にスルーさせて……」。歌詞を作り、ディレクションするユーミン。ブースでマイクに向かうのは小林麻美。彼女たちにとってスタジオも東京の遊び場だった。「『雨音~』は、麻美とユーミンがある意味共謀のノリで手掛けた作品だった。メロディも、詞も、小林麻美とユーミンという存在も、バブルという時代に全てシンクロし、アイコンとして人々の心に刻印された」(『小林麻美 第二幕』より)
「本当にサクッとやったの。サクサクと作ってサクッと終わったものが《え? 売れたの?》って感じ」。女性版アメリカン・ニューシネマといわれる『テルマ&ルイーズ』を彷彿させる、クールな「不良」少女たちによるイノセントなたくらみ。「毎晩のようにつるんで遊んでいた自分たちのやっている音楽が認められて誇らしかった」と麻美は言う。アイドル、モデル、女優と、「小林麻美」は表現者がこぞって起用したがるオブジェだった。時代の顔、象徴として。そこに「クリエイター」という新たな顔が加わった。