医師の友人が診察中、患者の咳をあびた。その患者の家族が発熱中だということもあり、友人はその場で検査ラボにPCR検査を依頼したそうなのだが、全く聞く耳を持ってもらえなかったという。「帰国者・接触者・外来か、同様の機能を有する医療機関から」しか検査は受け付けないと、厚生労働省からお達しがあるからだという。5月のことだ。
「気になることがあれば、検査をするのが、医療。たとえ保険が利かなくても、お金を払えば、どんな検査もできるのが日本。それが新型コロナウイルスに限っては、国がやらせないよう指示している。こんなこと医師人生で初めてだわ」
結局友人は検査できずに、医師としての業務を続け、結論から言えば発症はしなかったが、「このままじゃ、国に殺されるのかもね……」と抑揚のない調子でつぶやいた。
正確な感染者数が分からない。情報はコントロールされる。COVID−19は、そんな日本の現実を暴いたのかもしれない。電通と政権の深い関係が、今、メディアでも語られるようになっているが、安倍政権はこれまでいったい「広告費」にいくら、私たちの税金を使ってきたのだろう。
外務省が4月に発表した、コロナ対策の補正予算には「感染症を巡るネガティブな対日認識を払拭するため、外務本省及び在外公館において、SNS等インターネットを通じ、我が国の状況や取組に係る情報発信を拡充」するために24億円の予算がつけられていた。俺の批判は許さねぇ、とSNSやインターネットでの発信に24億円を使うということだろうか。ちなみに2019年度の感染症対策の推進の予算は270億円だった。宣伝費には莫大(ばくだい)な金をかけ、命を守る研究には出し惜しみ。あ、これが、ネガティブな対日認識でしょうか。
海外に対する情報コントロールは、もちろん今に始まったことではない。「慰安婦」問題に関わっている立場からすれば、日本政府が、海外の対日認識にかなりセンシティブなのが分かる。世界各国で「平和の少女像」(「慰安婦」問題を記憶し、戦時性暴力を根絶するための像)が計画されたが、突如中止されたり、撤去されたり、移設されるなどの事態が続いている。日本領事館などの働きかけが判明しており、世界各地で市民たちが建てようとする平和の像をつぶそうという圧力を感じる。
例えば、2018年12月28日、フィリピンのラグナ州サンペドロ市に「平和の少女像」設置。2日後の30日に撤去。サンペドロ市長は「日本との友好関係を傷つける意図はなく、混乱や議論を避けるために撤去した」と記者会見で釈明した。