自分でもあの時、よくやるって言ったな、と。野球で大学に行きたい、社会人野球もやりたいと思っていたんです。
演劇では特攻隊員を演じて、もちろん小さな役なんですが、全国大会まで行った。野球では行けなかったのに(笑)。地区大会までは興味がなくて、正直「負けてもいいや、助っ人だし」と思っていた。でも、県大会で芝居の幕が下りて、審査員の先生の講評もたいして聞かずに、ただ「役者やろう」と思いました。自分でも理由はわからない。でも、快感でした。舞台の上に立った瞬間が、間違いなく気持ちよかったんです。
この県大会の前日、大学入試を受けていた。車の中で母に「大学野球でキャプテンをやる。高校で連れていけなかった全国に連れていくから、待っててね」と伝えると、母は「うれしい! ありがとう」と驚喜した。その翌日、突如芽生えた芝居への情熱。自身も戸惑った。
岡田:一時の気持ちなんじゃないかって、自分でも考えたんです。でも、1カ月たっても情熱は消えなかった。だから「これは違うな」と。いろいろ考えてから、親に打ち明けました。はじめはぶつかりましたが、今は応援してくれています。当時、両親の頭の中には僕が野球を続けていくことしかなかったから、混乱したと思うんです。だからこそ冷静に「僕はやりたいから。本気だよ」って伝えました。
2018年に高校を卒業し、同年に放送開始のドラマ「中学聖日記」で主人公を一途に愛する相手役でデビューした。役柄から真面目で物静かなイメージを持たれがちだが、本人は大きな身ぶり手ぶりで話す。
自分を他人により「開く」ようになったのは、劇場版「奥様は、取り扱い注意」の撮影で青年・珠里役を演じたことも影響した。
岡田:珠里を理解しようとした準備期間と、珠里として生きた時間が大きかった。自分のことを認める力をつけることができたんです。それまでは僕に対して真面目とかまっすぐというイメージがあったと思うし、僕自身もそうだと思います。今でもその球種は持っている。でも、違う姿もあると自分自身に見せられたのが大きいと思っています。