新型コロナウイルスの影響を大きく受けた演劇界。俳優の近藤芳正さんは津川雅彦さんの「起きたことが正解」という口癖が「精神安定剤になってくれた」という。近藤さんはそんななか、Zoomを使った演劇「12人の優しい日本人を読む会」で注目を浴びた。
【前編/Zoom演劇の立役者・近藤芳正「“芝居バカ”だと再認識しました(笑)」】より続く
19歳で愛知から上京して、今年でちょうど40年になる近藤さん。20代のころ、コント赤信号の3人の勧めもあって、岡田正子さんという方が教えているフランス発祥の「ベラ・レーヌ・システム」という演技システムに出合った。1950年代にフランスに渡った岡田さんは、「ベラ・レーヌ・システム」の日本での第一人者だった。このメソッドを、若き近藤さんは徹底的に学んだ。そのことは、のちの俳優の仕事に、大きく生かされたという。5~6年前からは、アメリカで演出を学んだ演出家の小川絵梨子さんに刺激されて、海外の演技メソッドを伝えるワークショップに積極的に参加するようになる。
「そこから、ベラ・レーヌ・システムと、自分の経験を重ね合わせて得たものを、若い人たちに伝えていこうと思って、定期的にワークショップを開くようになりました」
ブログにツイッターにインスタグラムとSNSも活用し、芝居関連では、世代を超えての交流もどんどん行っているが、そこにはどんな思いがあるのだろうか。
「お子さんがいる人は、お子さんに自分が体得した“何か”をつないでいくことができますよね。僕の場合、子供はいないけれど、せっかく役者としての経験はあるのだから、若い世代にそれをつないでいくことも、僕にできることの一つなんじゃないかと思った。俳優って、若い人たちに、『僕はこうやって乗り切ってきたよ』と話す機会があまりないんですよ。演出家、映画監督のワークショップは多いけれど、役者のワークショップは少ない。でも、演出家や映画監督の数より、役者の数のほうがずっと多いですからね」