生者と死者が混在する墓地での彼の言葉に大きな広がりを感じた。
「不幸なことは起きているけど、日常生活の灯が消えたら、今度は心の中の宇宙旅行に出かけられる。心の中には心の外と同じくらいのスペースが広がっているんです」
親友、加藤和彦さんと8時間かけて東京にギターを買いに来たこと、突如発売中止になった『イムジン河』のこと、空を見上げ、自ら命を絶ってしまった加藤和彦さんの人生に思いを馳せた。
神宮球場にも歩を進めた。墓地が生と死に思いを巡らせる場所なら、神宮はリアルな勝負の場所。少年時代からスワローズファンだったきたやまさんはミュージシャンの仕事になぞらえ、「試合がステージなら日常は楽屋。舞台と楽屋の行き来こそが“旅”。それを繰り返すことこそが面白さであり苦しみでもある」と。自由な外出が難しくなってしまうからこそ、自分の心に広がる世界を感じよう。そんな思いを語るきたやまさんだった。今後コロナの第2波、第3波が来るとも言われる。きたやまさんの言う「心の旅」を胸に大きな構えで過ごしていきたい。
※週刊朝日 2020年7月10日号