確定申告の手続きが始まった。「伝説のトレーダー」と評され、現在は投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表を務める藤巻健史氏は、この時期になると税金について考えることがいくつもあるという。

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 第一に、米国と同じように日本人も会社員を含め、全員が確定申告をすべきだ、と思う。いまの源泉徴収は戦時中、戦費を効率的に集めるためにできた制度だが、それによって所得税を払っている実感が希薄になる。日本人が簡単に政治家のバラマキを許すのは、ここにも一因があるのではなかろうか?

 第二に消費税率が、先進国中、ダントツに低いという現実だ。そのうえ、課税対象となる所得額が高すぎて、所得税を払っていない国民の割合が他国に比べてべらぼうに高い。

 第三に税制を、もっと「国の形」「国民の生活形態」を方向づけるために活用すべきだ、ということだ。ほんの小さな例でいえば、日本に社用車が多いのは、フリンジベネフィット(企業が役員や社員に与える給料以外の種々の利益。社用車をはじめ福利厚生など)に税金がかからないからではないか? 欧米だったら、「社用車より給料増やせ」となる。

 累進課税を緩めれば、「細く長く」働く職業人生のほかに「太く短く」勤めて、第二の人生を楽しもうとする人が出てくるかもしれない。哲学者や作家が「日本人固有」と分析する文化や人生観でさえも税制いかんでコロッと変わると私は思っている。

※週刊朝日 2012年3月9日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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