今年6月から、職場でのパワーハラスメント(パワハラ)を防止する法律が改正されたことをご存じだろうか。
正式名称は改正労働施策統合推進法、通称「パワハラ防止法」。新たに改正された内容では、パワハラに関する社内方針の明確化や苦情に対する相談体制の整備など、雇用管理上、必要な措置を取ることが事業者に義務づけられている。ただ、何がパワハラ行為に当たるのか世間の理解が定着したとは言い難く、加害者―被害者間で見解が対立するケースも多い。直近では、北海道大学総長の解任がそうだ。
大学の公表資料によれば、名和豊春前総長のパワハラを含む不適切な言動について教職員から告発があり、2018年11月、学内に調査委員会が設置された。審議の結果、「威圧的にふるまう」「過度に叱責(しっせき)する」など、30件の不適切行為が認定された(国による再調査の結果、最終的に認定を受けたのは28件)。先月には、国立大学法人法に基づき萩生田光一文部科学相が学長を解任した。
一方、名和氏は陳述書などを通じ、「職員の人格を責める気持ちを抱いたことも、人格も責めたことも一度もない」「叱責注意が全てハラスメントと評価されては、総長としての仕事が成り立たなくなってしまう」と反論。同じ行為をめぐって、双方の認識が大きく分かれる形となった。
いったい「パワハラ」とは、どのような行為を指すのか。この機に改めて確認しておきたい。
厚生労働省が設けるハラスメント対策のサイトでは、職場のパワハラは(1)優越的な関係を背景に(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動で(3)労働者の就業環境が害される、という三つの要素をすべて満たすものと定義される。
優越的な関係は、「パワハラを受ける労働者が行為者に対して抵抗または拒絶できない蓋然(がいぜん)性が高い関係」を意味し、業務上必要な知識や経験を有している場合は、同僚や部下からのハラスメント行為もありうると注記されている。