公職選挙法で違反で起訴された衆院議員の河井克行被告(C)朝日新聞社
公職選挙法で違反で起訴された衆院議員の河井克行被告(C)朝日新聞社
起訴された参院議員の河井案里被告(C)朝日新聞社
起訴された参院議員の河井案里被告(C)朝日新聞社

 昨年7月の参院選で選挙区の広島県の市長、町長、県議、市議ら100人に約2900万円もの現金をばらまいき、公職選挙法違反(買収)の容疑で起訴された前法相、衆院議員の河井克行被告と妻で参院議員の河井案里被告。

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 克行被告は選挙の総括責任者、案里被告の候補者として、連座制に問われることになる。

「河井容疑者夫妻がいくら否認しようが、100人もの市長や県議がもらったカネは、案里被告の選挙で票をとりまとめる意味でもらったという趣旨の供述調書が複数、作成されている。録音録画をしている県議、市議もいる。絶対的な証拠もある」(捜査関係者)

 だが、不思議なことに、もらった市長や県議ら100人の刑事処分については、現在も決まっていない。昨日の検察の起訴発表でも「差し控える」「現時点で起訴すべる必要がある者は、起訴している」という回答を繰り返した。

 自民党本部から昨年7月の参院選公示前に夫妻に支出された1億5千万円の使途についても「オープンになっていない話で差し控える」と言うばかり。

 昨年12月には秋元司衆院議員が中国系企業から現金などをもらった収賄容疑で逮捕、起訴されたが、現金を提供した側も贈賄容疑で立件されている。

 罪名は違えど、渡した側の河井容疑者夫妻が起訴ならもらった側の市長や県議ら100人も立件されるのが通例だ。それも市長や県議など公職の立場の人たちが大半だ。元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士はこう言う。

「今回、検察が立件した河井夫妻容疑者の事件はカネで票を買う民主主義の根幹にかかわるもの。もらった側、被買収の人、多くが県議や市議など公職にある。そこを罪に問わない、これはおかしい」

 河井夫妻容疑者の起訴を受けて、本誌は現金をもらった市議、県議を改めて取材した。

「検察の調べで、もらったと素直に認めればおとがめなしという感じだった。事件にならなければ、助かる」(広島市議)

「現金をむりやり渡されただけ。起訴されないのは当然と思う。検察はよく見てくれている。昨日、もらった人は起訴されないと報道を見てほっとした」(広島県議)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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百日裁判で争う方針の克行被告