「これまで経験したことのない状況ですが、その状況を楽しんでいます。以前、『私の名前はキム・サムスン』に出たときも多くの方々に愛していただきましたが、当時は人気を楽しめる余裕なんてありませんでした。でもいまは経験を積んだせいか、あるいは年齢のせいか、気持ちに余裕ができ、楽しめる自分がいます」

 人気が出れば、人気を失うという恐怖も味わうことになるが、そうした恐怖はまったく感じていないと語っている。

「なぜ自分でもそう思えるのか、不思議なんですけど。自分に自信があるからというわけでもないんですが。実は、こんな人気を浴びている状況は自分のものではないという考えがつねに自分のなかにあるんです。だから人気がなくなっても、元の自分に戻っただけと思うでしょうね。いまの状況でいられたらとは思いますが、人気がどうのこうのではないですね」

 どれほど人気が出てもおごったところはない。いつも笑顔で礼儀正しい。ヒョンビンを身近で知る人たちは、オールマイティーを要求される韓国のトップスターにあっても、抜群の好青年だと口をそろえる。つねに品行方正のイメージがあるなか、ストレスがたまり、羽目をはずすことはないのだろうか。以前、酒が強くないと聞いたことがある。

「もちろん、ストレスを感じることもありますよ。でも僕の場合は、周りにすごく恵まれていると思うんですね。自分に足りないところも補ってもらってここまでこられました。ストレスがたまっても、周りの人たちと一緒にお酒を飲んだり、また一緒に仕事をしたり、それを繰り返すことで乗り切ってきました。役者同士で共感し合えることも多いです。あとストレッチで、気分を発散しています」

 いつも冷静沈着そうに見えるが、実は違うという。

「あがり症です。一番苦手なのはオーディションです。100メートル走のスタートに立つときなんか、もう大変です(笑)」

 これまでに一番つらいと感じたことは何かとたずねたら、ひとつには絞れないと語った。ただ、演技をやめようと思ったことはないという。

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