では原理原則を運用するには、どうすればいいのか。複数の専門家への取材から、まずは食事の改善がもっともインパクトが大きいといえる。というのも、運動は一般的な社会人であれば、できても週に1~2回。しかし、食事をする機会は1日3食と考えれば20回以上。間食をしている人なら30回に近くなる。食事を変えるのがダイエットの近道だとされるゆえんである。

 ただし、栄養素のバランスを、各自の肥満状況に合わせて考えるのはそう簡単ではない。そんなとき活用したいのが「ダイエットアプリ」。「カロママ」や「あすけん」などのアプリは、目標の体重に対してどのような食事が望ましいかを自動的に計算する。実際の食事内容をアップロードすれば、「脂質が多すぎます」「食物繊維が少なすぎます」などとアドバイスをしてくれる。

 有酸素運動を併用するのもおすすめだ。ウォーキングやサイクリング、水泳などの有酸素運動はエネルギー消費量が大きい。運動は合計の時間で減量の効果が左右されるため、1回あたりの時間が短くてもよい。つまり、週に2回60分のジョギングをするより、週に5回30分のジョギングをする方がやせると考えられる。たまに長い時間のジョギングをして、満足している人はいないだろうか。これもまた、正しい知識を持っていないがゆえに起きる、失敗なのだ。

 もう一つおすすめしたいのが、アクティビティートラッカーだ。肥満者には思考のクセがあることを紹介したが、それは自身に対しての認知が歪んでいるということでもある。例えば、食べているのに食べていないと思い、動いていないのに動いていると思う。食事に関してはダイエット管理アプリで客観的に数値化、体を動かす活動量についてはアクティビティートラッカーのようなデバイスを導入するのがいいだろう。1万円程度のものでも、運動によるエネルギー消費量だけでなく、基礎代謝なども計算して表示されるため、認知の歪みを防いでくれる。(朝日新聞社・朽木誠一郎)

AERA 2020年7月20日号より抜粋

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