3人の男性を殺害した殺人罪などに問われ、さいたま地裁で公判中の木嶋佳苗被告(37)。その法廷で、「異議。誤導です!」と勢いよく挙手して頻繁に佳苗被告の弁護団に注文をつけるのが、公判の主任である、さいたま地検の上田敏晴検事(38)だ。

 厚生労働省の元局長、村木厚子さん(56)が逮捕され、後に無罪となった郵便不正事件。上田検事は、郵便法違反容疑で逮捕された、阿部徹被告(58)=上告中=の取り調べを担当し、「懲役15年にするぞ」「息子も逮捕してやる」などと脅迫的な取り調べをして、民主党の衆議院議員の関与を強引に認めさせようとしたのだ。それは阿部被告の公判で問題となり、「威圧的な取り調べ」と認定され、供述調書に任意性がないと大阪地裁は不採用とした。

 阿部被告は上田検事の強引な脅迫的な取り調べで精神を病んだ。

「上田検事から怒鳴られた様子を今でも夢に見て、夜中に飛び起きることがあります」(阿部被告)

 上田検事の無茶な取り調べは、村木さんが無罪となった事件と同様に、最高検の検証の対象となった。

 阿部被告に加え、かつて上田検事の強引な取り調べを受けたとして渡部完・元宝塚市長(53)も、検察官適格審査会に上田検事の審査を求めている。

その上田検事も、法務省刑事局付に"左遷"された身だ。その後、さいたま地検に異動、佳苗被告の事件を担当するようになる。

 2月8日の法廷では、上田検事は「財務分析官」として、捜査段階で佳苗被告の金銭の流れを解明したと自慢げに証言した。一方、弁護側の質問には、「都合のいいところだけ取り上げるな」「追及モードの質問は控えるべきだ」などと、自身の"過去"を棚上げするかのように、食ってかかった。

※週刊朝日 2012年2月24日号