夢を見ているように楽しそうだった――。
09年8月に遺体で発見された東京都千代田区の会社員・大出嘉之さん(当時41)の母・昌子さん(77)は13日の法廷で、息子が木嶋佳苗被告と過ごした日々をそう振り返った。
木嶋被告は大出さんのほか、婚活サイトで知り合った東京都青梅市の会社員・寺田隆夫さん(同53)、千葉県野田市の無職・安藤建三さん(同80)から多額の金品をだましとり殺害した殺人罪のほか、6人の男性に対する詐欺や窃盗、詐欺未遂の罪に問われている。
木嶋被告は二つの詐欺を除いて全面否認を貫いているが、検察側の冒頭陳述などによれば、寺田さんから約1700万円、大出さんから470万円--と、出会って間もない男性から次々と大金を引き出したとされる。
木嶋被告がカネと引き換えに男性たちに見せた夢とはどんなものだったのか。
検察側の指摘では、大出さんは09年7月13日、世界最大級の結婚マッチングサイト「マッチ・ドットコム」で木嶋被告と知り合った。大出さんはこんな自己紹介をしていたという。
〈いわゆる勝ち組企業に勤めています。いずれ家でも買おうかなと。女性は地味でもいい。家庭的な女性がいいかな〉(文面は要旨。以下〈 〉内はすべて同じ)
対する木嶋被告は、
〈おいしい手作り料理で愛情を伝えたいです。スキンシップを大切にして末永く心から愛し合って尊敬できる伴侶を探しています〉
〈四人兄弟の長女です。本当に運命の人に出会えたら、電撃的な結婚もあると思っています。遊び友達や、長く付き合える彼女をお探しの方はご遠慮下さい〉
などと長文で結婚に対する真剣さを訴えていた。
大出さんが被告に好意を示すメールを送ると、木嶋被告は、
〈私は学生です。結婚を前提にお付き合いできる方を探しています。学生生活を応援してくれる人を希望しています〉
といった趣旨のメールを返信し、冒頭から自身が求める条件をズバリと示してみせた。
一方で、
〈肉体関係の相性もあると思います。結婚するなら、交際期間であっても避妊しなくてかまいません〉
などというメールも送り、多くの男性の心に潜む願望をくすぐってみせる。心憎いのは、肉体関係が支援の見返りではなく、被告自身の意思だとしている点だ。