妊娠後期になり、出産が近づくと子宮を収縮したり、やわらかくして分娩を促進する「プロスタグランジン」という物質が増えますが、歯ぐきから出てくるこうした物質の中にはプロスタグランジンと似たような働きをするものが多く含まれています。
このため、子宮が本来、出産をする時期よりも前に収縮を起こしてしまい、早産を引き起こすのではないかと考えられているのです。ただし、早産のリスクは喫煙や高齢出産、アルコールなどほかにもさまざまな要因があります。歯周病についても、詳しいことが解明されるのはこれからです。
とはいえ、こうした現状から妊婦さんが歯周病に注意したほうがいいことは確実です。では、どのように口の中のケアをすればいいのでしょうか?
私たちは妊娠期のこまめな歯のクリーニングを推奨しています。安定期に入ったら1カ月に1回くらいの割合で歯科に来ていただき、歯周病にならないよう、プラークや歯石の除去をしてもらうのです。おなかが苦しくないようにデンタルチェアは起こしぎみにするなど、楽な姿勢で受けていただくことができます。
歯周病とすでに診断されている人は主治医の指示にしたがって、治療を継続してほしいと思います。心配されている人が多いX線検査は基本的にしませんし、もしどうしても必要な場合には鉛入りの防護エプロンでおなかをしっかりと防御して撮影をします(歯科のX線写真は直接、おなかに照射されませんが、念のための処置です)。なお、薬は使いません。
安定期に入れば歯周外科治療も問題がないとされていますが、必要な場合も、妊婦さんの希望を聞いた上で、無理なことはおこなわないようになっていますので、安心していらしてほしいと思います。