Netflixオリジナルシリーズ『愛の不時着』独占配信中
Netflixオリジナルシリーズ『愛の不時着』独占配信中
この記事の写真をすべて見る

「愛の不時着」で再ブレイクを果たしたヒョンビン。専門家は俳優としての魅力や今後の可能性をどう見るのか。AERA 2020年8月10日-17日合併号で、韓流ドラマ専門家・藤脇邦夫さんが分析する。

【写真特集】ヒョンビン沼にひたる!「愛の不時着」の場面写真はこちら

*  *  *

 私は韓流ドラマを500本以上視聴していますが、「愛の不時着」が凡百の韓国ドラマの中で特別の位置を占めている理由は、韓国財閥の若き令嬢が、運命のいたずらとでもいうべき事故で、北朝鮮に不時着してしまうところにあります。昔から「恋愛は二人を取り巻く困難が多ければ多いほど燃え上がる」といいますが、この困難は決定的です。

 ヒョンビンは、ある種不器用なところが魅力的でもあるのですが、俳優としての幅は意外に狭く、守備範囲が限定されるのは残念ながら事実です(実は、これはぺ・ヨンジュンにも当てはまることです)。タレントの水準で語るならそんなことはマイナス条件にはなりませんが、私はヒョンビンをあくまでも俳優として見ているので、どうしてもその判定は厳しくなります。 では、「愛の不時着」以降、ヒョンビンの俳優としての可能性のあるジャンルはどういうものかと考えると、最大公約数的な予想では、2点あると思います。

 一つはやはり今回、「愛の不時着」で図らずも発見された軍人役です。イケメンの軍人役はなかなかいないもので、今のところヒョンビンの俳優としての特性を最も生かした配役ではないかと考えられます。しかも、非日常の極限状態にある「戦争」を現時点で考えると、やはり舞台は韓国とは切っても切り離せない、民族を二分した「朝鮮戦争」です。「朝鮮戦争」をテーマにしたドラマは『定年後の韓国ドラマ』にも書いたように数多く作られていますが、ヒョンビンを主役の一人にした群像劇はある程度想定できる題材です。もう1点は、「愛の不時着」でも効果的に挿入されたピアノ演奏のシーンを拡大解釈して、クラシック界を舞台にした、「春のワルツ」のような「孤高のピアニスト」による、ピカレスクならぬ、貴種流離譚も当然考えられて然るべき企画です。

AERA 2020年8月10日-17日合併号