AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。「書店員さんオススメの一冊」では、売り場を預かる各書店の担当者がイチオシの作品を挙げています。
【写真】必死すぎる?「餌やり禁止」の看板を撤去しようとする猫
『猫と住まいの解剖図鑑』は、保護猫たちと暮らす著者が、日々の観察をもとに、猫との共同生活に役立つ新築・改築・DIY術や猫のお世話の仕方をまとめた一冊。肩肘張らずに「猫と人が尊重し合う」暮らしのヒントがあふれる。著者のいしまるあきこさんに、同著に込めた思いを聞いた。
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1級建築士で猫シッターとしても活躍する、いしまるあきこさん(42)。猫との一体感が半端ないが、意外にも猫と暮らすようになったのは大人になってからだ。7年前、近所の草むらで、生まれて間もない子猫のきょうだい「しろ」と「くろ」に出会って保護したのがきっかけだった。以来、夫と増え続ける猫を抱えて空き家探しに奔走、巡り合った築60年の二軒長屋を丸ごと借りて「平井ねこのいえ」と命名、改装に取り組んだ。天井裏に隠れていた梁(はり)を表に出すことでキャットウォーク化、左右の住居も繋がり猫たちは自由自在に行き来できるようになった。
本書は、今は6匹にまで増えた猫たちと、この家で幸せな暮らしを続けるうちに身につけたノウハウを、わかりやすく落とし込んだ手引書だ。
幼稚園児時代から飼育委員を務め金魚やカブトムシ、カタツムリ、ザリガニなどを育て、近所の飼い犬の散歩にくっついて歩くような生き物が大好きな少女だった。しかし、父親は動物が苦手で、社宅住まいだったことから自分で飼うのはあきらめ、中学3年生までは獣医を志して勉強に励んだ。ところが。
「全ての命を助けられないのは仕方のないことだけど、動物を亡くしたときの飼い主さんの心のケアまではできそうもない。動物が好き、ぐらいでいいのかな」
職業として選択するには重すぎると感じ、絵や間取り図を描くことが好きだったことから建築家を志すようになり、東京理科大学理工学部建築学科に進学した。