(1)西松建設の違法献金事件の背景事情として、東北地方の公共事業での受注決定の際、小沢事務所が談合による本命業者の選定に決定的な影響力を持っていた。さらに、大久保被告が業者を決める「天の声」を出す役割を担い、ゼネコンから多額の献金を受け入れる窓口だった

(2)小沢氏の資金管理団体「陸山会」を巡る土地取引事件では、その背景事情として、小沢氏の地元の「胆沢ダム」建設工事受注に絡み、中堅ゼネコン・水谷建設から、04年10月に石川議員に、翌05年4月に大久保被告に、それぞれ現金5千万円が渡った

 --と断定したうえで、陸山会の土地購入の原資となった小沢氏からの借入金「4億円」について、〈原資不明の4億円での土地取得が発覚すれば、裏献金や企業と癒着して資金集めをしていた実態が明るみに出る可能性があるため、隠蔽をした〉とも認定した。

 政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪に問われた3人の判決は、石川議員に禁錮2年執行猶予3年、大久保被告に禁錮3年執行猶予5年、池田被告に禁錮1年執行猶予3年だった。

 しかし、これがどうにも耳を疑いたくなる"独善的"な認定なのだ。元検事の郷原信郎氏が言う。

「一言で言うと"ストーリー判決"です。物事を単純化してストーリーを描いて、無理やり調書にすることで特捜部は批判された。しかし、この判決は裁判官が描いたストーリーに沿って、調書によらずに、臆測・推測、さらには妄想に近いものまでも認定している。こんなのがまかり通るならば刑事裁判をやる意味はありません」

 ジャーナリストの魚住昭氏もこう語った。

「正直、驚きました。裁判所の事実認定どおりならば、悪質かつ巨額の賄賂があったわけで、贈収賄事件ですから、実刑になるべきですが、執行猶予がついた。事実認定と刑が乖離している。初めから有罪ありきで考えてるから、こういう認定をしなくてはならなくなるんです。『疑わしきは被告人の利益に』が裁判の大原則なのに、『検察の利益』になっている」

◆賄賂があるなら贈収賄に問え◆

 ここまでボロクソに言われている判決だが、こうなった理由は単純なようだ。

「結局、『水谷マネー』の部分をなくしてしまうと、虚偽記載の動機の悪質性が希薄になり、量刑が罰金刑くらいまで落ちてしまう。それでは政治資金収支報告書の修正程度の"形式犯"だと批判され、そもそも処罰価値があったのかという議論が再燃することになる。裁判所は、検察のメンツを立てたのです」(魚住氏)

 この裁判で最大の焦点となった「水谷マネー」を詳しく見てみる。

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